そのメンタル不調は「気象病」が原因?
急変する天気を乗り切る3つの対策
梅雨や台風シーズンは天気が崩れがちです。雨の日によく「朝起きられない」「頭痛がする」「体調が悪くなる」といったことはありますか?
季節の変わり目にだるさを感じたり、雨が降る前や天気が変わる前に眠気が襲ってくるといった体調不良は、もしかしたら「気象病」かもしれません。天候や気圧の変化による心身の不調について、最近「疾患」としての認知が進んでいます。全く不調を感じない人がいる・人によってさまざまな症状が起こるため誤解されがちなこともあり、本人にとってはゆううつなもの。天候や気温・気圧・湿度などの気象条件が症状の引き金となるため、一日の天気の変化が激しい夏や秋、季節の変わり目は特に注意が必要です。
メンタルの健康はまず体の変化に気が付くところから。今回は「気象病」の原因、予防法についてお話します。
頭痛やめまい、肩こり……検査してもわからない不調は「天気」が原因?
雨の日になると頭痛に悩まされたり、季節の変わり目になると体調を崩したり。「雨の降る前には節々が痛む」という話を、一度は聞いたことがあるのではないでしょう、気象病とは気象の変化に伴い現れる体調不調のことをいいます。代表的な症状は頭痛・体のコリ・だるさなどですが、持病の内容や体質によって、めまい、関節痛、吐き気、イラつきや落ち込みなど心身問わず様々な不調を伴います。特に頭痛や関節の痛みを伴う気象病は「天気痛」とされ、平均週2日ほど発症しているというアンケート結果も。5人に1人が「気象病(天気痛)」による生活の支障を感じているようです。
気象病が原因でメンタル不調になることも?
「不調への理解」を
気象病は症状の訴えがあるのに検査で原因が特定されない「不定愁訴」状態が多く、長らく「気のせい」といわれることが多くありました。特に若い方、男性の方のこのような不調は「我慢・管理が足りない」とされ、必要な配慮がされなかったり理解されなかったりという経験を持つ方もいることでしょう。
体調不良自体が抑うつ状態や不安の原因となるだけでなく、周囲の反応や無理をして仕事を行わなければならないプレッシャーが続くことによって、よりストレスを感じる・ストレスに対する心身反応で不調が悪化する場合があります。 元気に働きたい、がんばりたいと思ってもコントロールできないことが原因で、不調が起こるのは本人にとってももどかしいものです。
気象病を患う人の多くは、天気というあいまいなものに左右される痛みや不調について、 【「なぜ具合が悪いのか」「どれほど痛いのか」を周囲に理解してもらう・声をあげるのはとても難しい 】と感じているという報告があります。 体質や持病に起因する体調不良は周囲に説明が難しく、ひと月ふた月で回復しないこともあり、一日の多くを過ごす職場でのストレスが続くとメンタル不調の原因にもなりかねません。
「無理しない職場づくり」は、まず 「不調の理解」から。
医療につなぐ、一緒に解決策を考える、気軽に相談できる環境を整えるなどの人と職場が協力して不調を乗り越える「対策」が取れたらいいですね。
気象病は「環境の変化」によるもの?不調のメカニズムとタイミングを知ろう
「気圧」が体のバランスを崩すメカニズム
乗り物酔いしやすい人は要注意
では、なぜ気象病は生じるのでしょうか。そのメカニズムが最近の研究からわかってきました。人間の身体は、気温・気圧・湿度といった環境の変化に対し意識することなく体を変化させて対応を行っています。気象病は、この無意識の対応が環境の変化に対処できなくなることから発生すると言われています。特に「気圧の変化」は体のバランスをとっている『内耳』を刺激してしまい、身体の感覚と視覚情報のズレを引き起こし、自律神経の乱れ=多くの気象病の原因となるのではないかと研究が進められています。
現代の生活習慣による体質の変化や、局地的大雨・台風などの極端な気象現象が増え、年々気象病を訴える方の数は増加傾向にあります。以下のポイントに心当たりのある人はこれからの不調に注意を。
・乗り物酔いしやすい(内耳からの刺激に敏感な)人
・自律神経のバランスが崩れやすい人
⇒首や肩のコリがある
⇒エアコンの効いた室内にずっといる生活をしている
⇒運動不足 、睡眠不足が続いている
・ 影響を与えやすい低気圧が頻発する季節の変わり目、梅雨や台風の時期
まずは痛みのタイミングを知ろう
慢性的な痛みによって脳に強いストレスがかかる・自律神経のバランスが崩れると、不安やイライラなどの症状からその他の体の痛み・環境からのストレスにも敏感になってしまいます。
まずは以下の3点に注意して、自身の不調がどんなタイミングで起こるのか、生活やその時の天気も含めて記録してみましょう。
★日時(どんな状況で起こったか)
★どんな痛みや症状が、どれくらい長く続いたか
★症状のあった日一週間前後の仕事の忙しさ・生活の様子
後から見返してみて、
・天気が変化する前後
・季節の変わり目、気温差の大きい日
に不調が現れることが多ければ、「気象病」対策が有効な不調かもしれません。
医療機関や職場に相談する時にも、記録があると説明に役立ちますよ。
対策のツボは「血行」と「予測」夏の急変する天気を乗り切る3つの対策
辛い気象病ですが、気象病が出るたびに休む……というのもなかなか難しいものです。どうしたら気象病をなるべく軽減させることができるのでしょうか。生活の中で取り入れやすい対策を3つ、取り上げます。
1. 自律神経を整える「生活習慣」を身に着けよう
天候による不調の多くは自律神経のバランスが崩れたことによる「不定愁訴」にあたります。普段から自律神経のバランスを整える生活習慣を身に着けることは、天候や暑さ寒さからくる不調を予防する効果が期待されます。
・バランスのとれた食事
・少し汗をかくような適度な運動
・6時間以上の睡眠
などは一般的ですね。特に睡眠と食事は、身体の健康維持のためにも常に心掛けたい習慣です。また、入浴や外気に触れて「汗をかく」ことは、身体に元々備わった体調を維持するための対応力を呼び起こします。
熱中症や感染症に気を付けて、毎日ひとつずつ健康にいいことを続けていきましょう。
2. 天気予報を活用しよう
気象病や天気痛は、生活に深く関わる疾患として、気象予報の面からも対策が進んでいます。
天気予報の技術の進歩は目覚ましく、GPSやこれまでの観測データから、時間単位でかなり確度の高い予測が行えるようになりました。この予報技術とGPS、 IOT (モノのインターネット:家電など生活に関わる身近な機器のオンライン化・連携化)技術を組み合わせ、天候と合わせた“体調予報”を行うサービスが登場しています。
現在地情報から気圧の変化や天候の変化を知らせるアプリや数日間の天気と合わせて気象病発生リスクを教えてくれる予報サイトなどは、スマートホンからいつでも閲覧でき体調管理に役立ちます。
カレンダーや記録アプリと併用することで、よりスケジュールの調整・体調の分析が簡単になります。
3. 耳もみ体操で血行不良を予防しよう
耳は様々な神経とつながった、かなりデリケートな器官です。気圧の変化だけでなく血流の悪化なども内耳の動きに関与し、車酔い・めまい・頭痛などの症状を引き起こすことが報告されています。
マッサージなどで耳周りの血流を改善し、自律神経の働きを助けましょう!
~やってみよう!耳マッサージ~
耳と手を洗った状態で、気持ちよいと感じる程度の力加減でおこないましょう。
①耳を軽くつまみ、上・下・横に5秒ずつ引っ張る
②そのまま軽く引っ張りながら、後ろに向かってゆっくり5回まわす
③耳を包むように折り曲げ5秒キープ
④耳全体を掌で覆って、ゆっくり円描くように後ろに向かって5回まわす
※ 耳マッサージはあくまでも血流の促進効果を期待したものです。頭痛や耳の痛みを強く感じる方は、無理に行おうとせず医療機関を受診下さい。
マスクを使うことも多いこの頃、耳やその周りに負担がかかっていませんか?
休憩する時、リラックスしたい時も耳マッサージを取り入れてみてはいかがですか。
気象病など身体的な不調は、症状のない人から見ると、大袈裟に見えたり自己管理がなっていないと見えたりするかもしれません。痛さや辛さといった「感じ方」は個人差が大きく、同じ症状を訴えていてもその状態の説明や感じている程度については、説明すること、理解することが本当に難しいからです。
通院や休職が必要な人には配慮する・研修や正しい知識の周知を行うといった対応は、一緒に働く仲間への理解を深めるとともにハラスメントやいじめを予防し、無理をしない「働きやすい職場環境」を形成ことにもつながります。
〔参考文献・関連リンク〕
ウェザーニューズ:天気痛調査2020
NHK首都圏ナビ:気圧のせいで頭痛・肩こりも 梅雨の “気象病” セルフケアで快適に
一般財団法人京浜保健衛生協会:保健師便り 35.『気象病』に備える
日本経済新聞 電子版 NIKKEI STYLE ヘルスUP:健康づくり 天気の変化で不調を感じる「気象病」対処法は